夢の細道

夢日記

夏でもないのに #47

ついにイタリア空軍が出撃した。無数の戦闘機が空を埋め尽くしている。クリーム色した潜水艦のような飛行物体だ。どこを爆撃するのだろう。
暑くなってきた。ドアをあけると、なにやらヤカマシイ飛行物体がドッと入ってきた。イタリア空軍はオレを爆撃するんかよ。そいつらは部屋の中をバタバタと旋回してから網戸にとまった。焦げ茶色のアブラゼミだった。
戸をあけて外に追払って、すぐ閉めたが、今度はたくさん飛んできて、網戸の外側にとまっている。

ハンコ屋 #46

ハンコをなくしたのでハンコ屋に行った。頭の禿げた痩せたオジイチャンがいた。高校生の私を見るとハンコ屋が何か言ったが、とても聞きとりにくい。ズーズー弁なのか私の耳が悪いのか。ただ、私のことを心配して気づかっているようだった。どうやら、どうやってここまで来たのか、という意味らしい。私は肩の骨にヒビがはいって学校を休んでいること、ここまではスクーターで来たことなどを話した。老人は自宅でハンコを作っているハンコ職人で、詩人だった。店には彼の詩集もおいてあった。最新刊のタイトルは「骨の髄まで経験して死ぬといいだ」というものだった。ちょっとめくってみると、彼のズーズー弁より分かりにくくて、すぐに冊子を閉じた。私は好奇心から、詩の極意はなんですか、と質問してみた。老詩人は、無だ、と答えた。
次に、私は老詩人と同年代の老人になっていて、老詩人に、あなたのことも詩のことも全然わからないんです、と言った。オジイチャンは
能面のように笑っているだけだった。
ハンコなくしたら、また来まーす、と言って店をでた。私は少し怒っているようだった。誰でもない自分自身に腹をたてているふうだった。

蟹 #45

入江の近くに住んでいる。船着き場のような堤防の附近で何人かが海面を覗いている。私もつられて覗くと、浅そうな海底に大きくて旨そうな赤い魚が数匹泳いでいる。アミですくえそうな気がして、大きなタモアミを取りに家に戻った。タモアミは、しばらく使ってなかったせいか、かなり痛んでボロボロだ。それを使うしかないが、やはりうまくすくえない。
赤い魚を追って行くと、そいつは巨大なカニになっている。カニは堤防の真下に入っていった。大きくえぐれた海底洞窟のようになっている。そこにはカニのヌケガラがたくさんたまっていた。ここで巨大なカニたちは、脱皮して、深場に帰っていくのだなと納得した。

ガルコスタ #44

その日、録音機を再生していると、ガル コスタの声が入っていた。「私との交際をすっぽかすなら、それ相応のケアをして下さい。たとえば食事をおごるとか。」という伝言。ガルはブラジル人だが、日本語で言っていた。今では75歳の婆さんだ。一緒に聞いていた女友達に、「この人はブラジルでは有名な大歌手なんだ。」と得意げに語った。
一度、メシ食いに行かなきゃな、と言って、ゆるんでいる録音機のコードを円筒形のコイルに巻こうとするのだが、すぐにほつれて、なかなか巻けない。

記憶喪失 #43

大学の教室らしい片隅で友人らと談笑している。隣にいる長い付き合いの友人の名前が思い出せない。女友達が怪訝な顔付きになった。学生課で名簿を借りて確認しようと思うが、また迷って、外に出てしまう。戻ろうとするが入口が分からなくなっている。ひとつづつ記憶がなくなっていくのを感じる。何もかも忘れそうで、自失しそうで恐くなる。夢に入り過ぎて現実の記憶が欠落しはじめているのだろうか。夢見をやめるべきかと思いながら入口を探した。
大学のスロープが渓流の岩場のようになっていて、みんなソジョウするように入口に向かっている。教室に戻るのに時間がかかりそうだと思った。

線路 #42

朝の通勤電車。うっかり、いつもと違う電車に乗り、違う駅で降りた。前にも同じことがあって、その時は地図を持っていたので位置を調べることができたが、今日は地図を持ってない。前の経験がまったく役にたたない。駅を出て適当に歩いてみるが、わけが分からなくなった。途中で線路を見つけたから、これをたどって行けば何処かの駅に着くだろうと思ったが、また見失う。遅刻だから上司が怒っている顔が浮かぶ。いろいろ歩きあぐねて、再び線路を見つけた。たどって行くと登り坂になって、線路は急峻な山を登るように続いている。前を3人のリュックを背負った人が歩いている。この道を歩いていっていいのだろうか。大変な山道だが、ガムシャラに越えるしかない。

神父 #41

家は四角いコンクリート造りで屋上がついていた。私は庭にはえている葉っぱの豊かな木の枝を折って1メートルほどの十字架を作り、家の中で、水の入ったバケツにつけて柱にたてかけておいた。
黒い聖職衣を着た二人の神父がやってきた。ひとりは外人で、もうひとりは日本人だ。この二人は何か準備をした後で、外人の方が合図をすると、天井の中央の天窓があいて、いきなり水が滝のように落ちてきた。私は驚いてワァーと叫んだ。一瞬の滝は二人の神父の上にちょうどよく落ちて二人を濡らした。女がカン高く笑って、これがヨーロッパ式なのよ、と言った。神父がこの仕掛けを作ったらしい。日本人の神父には、この光景は似合わないような気がした。