T氏が僕を鳥料理屋に招待してくれた。料理が少しづつ運ばれてきたが、僕はその日歯医者に予約していて、せっかくの招待だったが、食べている時間があまりないことが気になりだしていた。だが目の前のT氏にずっと以前から聞きたいことがあるのを思い出した。T氏とは二度と会うことはないだろうと思っていたので、ここで会ったのは絶好の機会とばかり、鳥かつを口にホオバッてT氏のそばにイザリ寄った。「以前から聞きたいことがあったんです。」と僕が言った。「なにかな?」とT氏が機嫌よく言った。「イトコのK子の旦那のことで。」と僕が言った。「あれとは同級生で幼馴染みだった。」とT氏が言い、子供の頃のエピソードをいくつか話しだした。「彼は自殺したんですよね。車の中で排気ガス中毒で。」と僕が言った。「ほう、よく覚えてるね。」とT氏が言った。「新聞に出てましたから。」と僕が言った。あれは自殺じゃなくて他殺でしょう。殺したのはあなたでしょうと言いたかったのだが、夢は早々と終わっていた。長年このことは私の心の奥底に沈んでいる。殺したのはT氏で、殺害を依頼したのは私の父ではなかったか、と。ここには決して書けない深刻な要因がからんでいるのだが。
完全犯罪。警察の限界。バカでウスノロでマヌケな集団にとうてい解明不可能な秘密。