夢の細道

夢日記

釣り日記ではない 10

漁港の近くに魚屋を見つけた。鮮度の良さそうな魚があったので家の土産に買っていくことにした。魚屋の若い旦那が刺身用にさばいてくれた。大きな鯖もオマケで安くしてくれると言うのでついでに買うことにした。大きなまな板の上にサワラのような大鯖がのさばっていた。彼の友人が北の方で釣ってきたものだという。店頭に高校生が見学していたが愛想のいい若旦那が冷たく追っ払ったので意外な気がした。旦那が鯖に包丁を入れているうちに鮮度が良くないような気がした。100円だったから文句は言えまい。1000円出したら、ツリがないという。1000円でも別にいいじゃないかと旦那が言うので私もなんとなく妥協した。僕は毎週この近くの堤防に釣りの練習に来てるんですと私が言った。何が釣れるんだいと旦那が言った。特に釣れる魚はなかった。釣れなくても定期的に練習しておかないと、いざ、いい釣り場に行った時に釣りにならないんですと私が言った。若旦那は魚を売ってしまってからは私に無関心になって他の従業員と仕事の話を始めた。そこで私は残り物の魚をテイヨク買わされてしまったような気がした。

 

釣り日記ではない 9

郊外の住宅街の道路脇に下水溝があって水量が豊富に流れていた。私は釣針にスイカをつけて流れの中に垂らしてみた。なにもかかることはないだろうと思っていたが、そこに居合わせていた負け過ぎて休場になった大関霧島が、引いていると言うので、短竿を手に持ってみると強い引き込みだ。何だろう?カッパかもしれないと霧島が言った。釣糸が切れないように慎重にヤリトリしたが、急用があったので、近くの柵に竿を固定してその場を一時離れた。戻ってくると、竿も釣り糸もキレイになくなっていた。カッパが自分で針を外して釣竿を持ち去ったのだろうか。こうなるなら、釣り上げないまでも、姿だけでもひと目見るべきだったと後悔した。霧島が私のかわりに釣り上げていればいいのだが。そうだとしたらお相撲を廃業しても世紀の大発見で、一生食っていけるにちがいない。あるいは、カッパには霊力がありそうだから、この先、私はこっぴどい仕返しに合わされるかもしれない。

 

釣り日記ではない 8

ブダイは外道か?ブダイがいくらでも釣れる磯を見つけたものの、ブダイは旨くないと思うにいたった。もう食いたくない。スーパーに行けば、いくらでも美味しい魚が売っている。ミは硬くて味気ない。薄く切ってコブじめにしたりムニエルにしたり揚げたり味噌焼きにしたりポッカレモンに漬けたりミリン醤油で煮たり銀紙で野菜やキノコといっしょに包み焼きにしたりイロイロだが旨くなくて飽きてしまった。最後に塩をして日なたに干して干物にして食べてみたが、やっぱり旨くない。こうなると釣る気も失せてしまった。美味しい黒鯛が恋しい。💑

釣り日記ではない 7

釣り道具を持って海辺の道路を歩いていた。道路と平行に横たわる地磯の左端に石鯛釣り師が2本の竿を海に向かって固定している姿があった。そこへ私も行こうと思ったが、そこまではテトラやごつごつした大きな岩が入り組んでいて、怖くて足がすくんだ。諦めて地磯をにらみながら道路を前へ進んだ。干潮で潮で濡れた黒々とした地磯がとぎれとぎれに海から顔をさらしていた。その磯で短パンのアンチャンが網を振り回して何かを採っているのが見えた。片手に海水の入ったビニール袋をもっていた。道路脇の岩場からアンチャンのいる磯場まで浅い入江になっていて、干潮時にはその地磯まで歩いて渡れるのだなと思った。私はアンチャンのいる地磯目指して海水にさらされている低い岩場に足を踏み入れた。スパイク長靴を履いていたので濡れずに渡れた。それから足場の安定した場所を見つけてメジナ用のマキエをまいて竿を出してみた。すぐに強いあたりと絞り込みがあって、竿を上げると釣針がなくなっていた。針の外れにくいネムリ針に変え瞬間接着剤で補強し、磯に這うように生えている緑の海藻を針に付けて波の向こうに放りこんだ。すぐにウキがゆっくり沈み、合わせると強烈な引き込み。魚を疲れさせてから浮かせると、特大ブダイが姿を現した。タモですくい上げて潮だまりでエラにナイフを刺して血抜きした。その後もすぐに竿が絞り込まれて特大ブダイが顔を出した。ここはブダイの巣のようだった。立て続けに3尾釣って釣りをやめた。黒鯛やメジナもいそうな雰囲気。私は生涯の釣り場を見つけた気がした。帰ることにした。3尾のブダイを入れた保冷バッグもかなり重かった。道具をたたんで潮の満ちてきた浅場で足を踏み外して胸まで海水に浸かった。万事休す。ブダイと一緒に地獄行きか。夢なら目が覚めるだけでいい。浦島太郎は土左衛門の悲しい夢想か。なんとか這い上がって日なたで衣類を乾かした。死にたくなければ、スパイクウェイダーやライフジャケットは必須な所だ。

 

釣り日記ではない 6

そこは人のほとんど訪れることのない人々にうち捨てられ忘れかけられた70メートルほどの海に突き出た突堤でたまに物好きな老釣り師が竿を出すくらいの釣り人さえにも見捨てられた海鳥の姿もないうら淋しい場所だった。今はなんの用途もないが昔は小さな漁船の停泊のために作られたのだろうか。戦時下に人間魚雷の出撃基地として作られた遺物のような。停車駅からほど遠く駐車場もないが海沿いの道路の向こう側に小さなコンビニがあってトイレの役にはなっている。なんの魚も釣れることはほとんどないが、まれに黒鯛が釣れるという噂があった。いつか釣れることがあるのだろうか?怪訝な思いで今日も無意味に竿を出す。でも、何故か、海と光と風に包まれて、気持が楽になる。

釣り日記ではない 5

クロダイがよく釣れるという港に行ってみた。風が強く折りたたみ椅子が飛ばされそうだ。右手の方にベテランチヌ釣り師が一組いる。このベテランが時おり竿を曲げている。チヌ以外の釣り人たちに釣れている気配はない。波は午前中は2メートル午後からベタなぎの予報だ。ベテランがクロダイを取り込んでいるので見に行った。30センチオーバーの美しいクロダイだ。付け餌は普通のオキアミだという。ウキ下は底にはわせるようにするんだという。ベテランがスカリを引き上げると10匹以上のクロダイが入っていて驚いた。自分の場所に戻ってウキ下を底まで下げた。コチトラ遠矢流ミニダンゴ釣りだ。程なく30センチ程のクロダイがきた。それから昼過ぎまではクロダイの入れ食いである。棒ウキがスポスポ沈む。タマゲタ。こんなことがあるんか。夢なら覚めないでチョー。ベタなぎとなってクロの食いはピタリと止まった。ベテランもさっさとスクーターで帰ってしまった。  正月は朝からクロダイの刺身と頭つき塩焼でジャンジャン酒が飲めるドー。       追記  その後、何度かこの堤防を訪れたが、二度と釣れることはなかった。不思議なもんだね。

 

釣り日記ではない 4

富士山の見える港で小アジ釣りをしていた。ふだんはチヌやシーバスやタチウオやアオリイカやで小アジなどに手を出す私ではないのだが、前回、たまたま釣って持ち帰って塩焼きしたアジが旨くない、アジは旨いという通念がめっちゃ壊された。以前、ワカサギにはまっていた頃、どの湖のワカサギも美味しいのだが、某湖のワカサギだけは何度食べても極めて不味い。水質汚染のせいかと思ったりする。同様にこの素晴らしく富士山の見える年中アジの釣れる某港もなにかよくない原因があってのことだろうか。この港の近くに移住しようと本気に思っていた私は大変残念がった。残念のあまり夢の中でもう一度だけとアジ釣りを始めていた。餌のアミコマセが足りなくなりそうなので、近くの宿に戻っておかみさんに近所に釣具店はないかと聞いてみると、あるという。おかみさんも買い物ついでに釣具店へ案内してくれるというので、一緒に出かけた。くたびれてつぶれかけた小屋の一区に釣具店があった。おかみさんは洋装店のほうに行った。赤ら顔のオヤジが釣具店の中にいた。餌のアミコマセはあるかときくと、凍った4キロブロックのアミコマセの塊をだしてきた。この時、私は財布を持ってないことに気付いた。宿に戻って財布を取ってこよう。ついでに仕掛けも買っておこう。針はトリックサビキの7号か8号だ。店のオヤジが変わったサビキ針を出してきた。今度釣ったら、小アジ料理の定番の唐揚げや南蛮漬けにしてみよう。それでも不味かったら移住はヤメだ。